諏訪国ぐるぐる

年単位で遠出をしていなかったところに旅行のお誘いがきた。久しぶりにどこかへ行ってみよう。そう思って決めた行き先は信州・諏訪。同行者に車を出してもらえたため今回はちょっと気楽な小旅行の記録です。

行った

諏訪大社

信濃国一之宮にして古来から信仰をあつめる諏訪大社。諏訪湖の周辺に四つのお社が点在している大きな神社だ。この地を巡るにあたって外すわけにはいかないので四社きっちり回ってきた。

上社前宮

茅野市宮川に位置する前宮。上社のご神体は背後にある守屋山だという。本殿の周りには御柱祭で立てることで有名な四本の御柱があり、樅の柱の裏には里を曳いてくる時にできた傷が残っていた。解説を読んでいたら次の御柱祭は令和十年度とのこと。以前上諏訪駅を訪れた時が祭りのあとだったので、七年ごとってもうそんなすぐなのかと驚くことしきり。本殿のすぐ横にある水眼(すいが)という小川の流れがきれいでつい手を浸してみてしまう。こういう清流なんだか好きです。

上社本宮

諏訪市中洲宮山に位置する本宮。手水の横で温泉が湧いている。布橋という回廊に願い事を書いた風鈴を吊るすイベントをやっていて、ちょっと映える感じになっていた。参拝後、境内の隅でぼけっと突っ立っていたら虫よけアイテムのおにやんま君に命を吹き込んだようなオニヤンマが近くまで寄ってくる。自然豊か。こちらのお社は少しだけ門前町っぽいものがあり、お土産屋さんや飲食店などが並んでいた。真夏だが鹿肉の鹿まんを食べる。おいしい。

下社春宮

下諏訪町内に位置する春宮。こちらのご神体は杉の木。境内そばに岡本太郎が造形を称えたという万治の石仏を擁している。石仏にお参りする道中の浮島社のあたりの雰囲気がとてもよかった。砥川という川が流れていて島状に残った土地にお社が祀られており、どんな大水が出てもこの島は沈まないという言い伝えがあるんだとか。私が行った時は横笛の練習をしている人や水遊びの子供たち(おそらく地元の人々)がいてそういうのもなんだかよかった。ここの水も冷たくて気持ちがいい。いい流れだった。

下社秋宮

こちらも下諏訪町内の秋宮。旧中山道と甲州道の分岐点に位置している交通の要衝にあるお社で、ご神体はイチイの木。ちゃんと見てこなかったがここも温泉が湧いているらしい。秋宮の周辺が四社の中で一番栄えているような印象で、街道沿いには温泉旅館や老舗のお店などが並んでいた。春宮から二十分ほどの道のりを歩いて行き来してみたのだが、旧中山道を通るので少し昔の街道の趣を感じられて楽しい。夏のイベントか何かをやるらしく、神楽殿の前に音響機材がたくさん置かれていた。

神長官守矢史料館と藤森建築たち

上社の神長官という役職を代々勤めてきた守矢家の史料を展示する小さな史料館。前宮と本宮のちょうど中間地点くらいに位置している。展示室では文書史料のほか、鹿の頭を供える御頭祭の復元展示などもあってインパクト大。入口を入ると鹿の頭が大量に壁から生えているのでびっくりするけれどここは諏訪なのだ。建物の設計が建築家・藤森照信氏の手によるものでそういう視点でも面白みがある。敷地に入る門の表札が「神長官 守矢」でめちゃくちゃかっこいい。

史料館の裏には守矢家のミシャクジ社や古墳などと共に、いくつかの藤森建築たちも存在している。ここに建っているのは「空飛ぶ泥舟」「高過庵」「低過庵」の三建築。「空飛ぶ泥舟」は丸っこい建物がワイヤーで宙に吊られている中に入るのが怖そうな茶室だ。眼鏡みたいな窓がキュート。

「高過庵」「低過庵」はその名の通り高すぎたり低すぎたりする茶室だ。「高過庵」の方は高さ六メートルの樹上にあるツリーハウス的な茶室。「低過庵」は地下に埋められた竪穴式の茶室。屋根が手動で開くという。世の中には不思議なものがたくさんある。よくわからんものを受け止めて茅野の高台でしばしぼんやりする。

SUWAガラスの里

ガラス製品の美術館や体験工房やショップが一つにまとまっている施設。訪れた日は美術館で「高円宮家根付展」をやっていたので鑑賞する。精巧なつくりの鰻丼の根付があって笑ってしまった。鰻の蒲焼の上にちょこんと木の芽が乗っている本当においしそうな丼ぶりでして。カメラで有名な高円宮妃久子さまが根付と旅先の風景を組み合わせて撮られたお写真も楽しかった。

片倉館

昭和初期に片倉財閥によって諏訪湖畔に建設された大衆浴場。入浴できる国指定重要文化財。行くとわかるが「これがお風呂?」という感じの見てくれが面白い。中のお風呂は千人風呂と呼ばれるほど広いもの(実際一度に入浴できるのは百人ほどだそう)で、プールのような広さの浴槽に玉砂利が沈めてあって歩くと気持ちいい。食堂や休憩所もあり、お風呂に入って八ヶ岳牛乳を飲んでバルコニーから諏訪湖を眺めて休憩した。入浴料は八五〇円。夏休みなので流石に混んでいた。

諏訪湖サマーナイト花火

宿泊先でチェックインする際に「花火がありますよ」と教えていただいた。有名な湖上花火大会とは別に、夏休みの間約一か月ほど諏訪湖上で毎晩花火を上げているらしい。すごい。二十時半から十分間だというので、外で夕食を食べたあと宿に帰らず、湖畔で涼みながら待ってみることにした。上諏訪のツルヤで五一ワインのミニカップとドライフルーツに梅林堂のくるみやまびこを買い、時間までだらだらと駄弁る。しばらく待って始まった花火はちゃんとしたものが次々上がり、いつしか集ったオーディエンスも湧き、あっという間の十分間だった。思いがけず花火大会に来れたような感覚になって嬉しい。花火の写真はめちゃくちゃ下手に撮れていてここには載せられそうにないが、本当に思いがけずよい夏の夜だった。

唐沢鉱泉

諏訪の方を回ったので今度は茅野の方へ。八ヶ岳の峰のひとつである天狗岳の登山口にある秘湯・唐沢鉱泉へ日帰り入浴に向かう。茅野市街からは車で小一時間ほど。ダートの山道を上がると標高はかなり上がっていてだいぶ涼しい。受付で入浴料九九〇円を払って入浴。浴室は内湯のみでそこまで広くないが、木の浴槽、切り出した石の壁の隙間に生える苔や植物、天窓があって浴槽に光が差し込んできたりして、趣ある空間で気持ちよく過ごす。浴槽は大風呂と小風呂があり、少しずつ温度が異なる二種類のお湯に入れる感じ。ぬる湯が気持ちよく、あまり長湯しないタイプなのだけれどここではついだらだらしてしまった。午後は下山したお客さんで混雑しそうと踏んで午前中に伺ったらほぼ貸切状態。食堂でお昼をいただき(後述)、鉱泉の源泉を眺めて山を下りる。

暑さで藻みたいなのが生えていた源泉

冬はこんな感じ

茅野市尖石縄文考古館

唐沢鉱泉から山を下りたところにある縄文時代の集落跡・尖石遺跡。併設する考古館は小さいながら国宝の土偶を二体も擁する縄文好きにはたまらない博物館だ。とりあえずいったん国宝である「縄文のビーナス」と「仮面の女神」をじっくり見る。背面をしっかり見たことがなかったので新鮮だ。五千年前に作られたものとこうして対峙しているのは不思議でならない。

その他にもいろいろな展示があったけれど、個人的に一番気に入ったのがイノシシの装飾のついた土器。かわいかった。

杖突峠

帰り際たまたま通った杖突峠。ものすごく見晴らしがよく、今回巡ってきた諏訪や茅野の街を一望できた。八ヶ岳や諏訪湖も見渡すことができる。高いところに来るとやっぱり気分がいい。しばし風にあたる。また来たいと思う。

食べた

テンホウ

諏訪に行くと決めてから毎晩テンホウのことしか考えられなかった。テンホウは諏訪など長野の一部エリアを中心に展開するローカルラーメンチェーンで、香辛料の入っている特徴的な味の餃子が人気のお店だ。多様なメニューの中から何を頼もうか出かける前からずっと決めあぐねていたものの、今回は肉揚げラーメンにふつうの餃子という選択で決めた。おいしかった。家の隣にできてほしい。

いずみ屋

上諏訪駅前に昔からある和食屋さん。本当は普通のお食事がしたかったのだが、道中お腹を壊してしまって油ものや白米が食べられそうになく、こちらでお酒とおつまみ(冷奴とお刺身)を少量いただいた。眞澄もおつまみもおいしゅうございました。みそだれのみそ天丼というメニューがおいしそうだったので、次に行く時はぜひ再チャレンジしたい。

太養パン

諏訪の老舗パン屋さん。朝食にパンを買った。朝六時半開店の五分後くらいに行ったらもうすでに行列。夏休みって恐ろしい。二十分ほど並んだところでお店に入れて、一番人気のサバサンドを購入。オーブンで焼いたサバに玉ねぎとレタスのサンドはとてもおいしく朝から幸せな気分になった。リニューアル前に行った時は昭和の雰囲気のある昔ながらのパン屋さんという趣だったが、リニューアル後の現在はものすごくおしゃれになっていて驚き。

唐沢鉱泉の食堂

上記、唐沢鉱泉にて日帰り入浴ついでにお昼をいただく。ざるそばおいしい。とろろやきのこのおかずやちょっとだけ山菜もついているのが嬉しい。静かで涼しい山中で食べるというのがまた乙な感じ。長野のおそばはやはりいい。

お土産

諏訪大社のお守り

ごくごく普通のお守りを。淡い色がかわいらしかったので黄色の袋にした。

ツルヤでいろいろ

ツルヤは長野や群馬に展開しているスーパーで、プライベートブランド商品がおいしいと人気のところ。花火待ちの時にも食べていたツルヤのドライフルーツが私は好きなので、今回は値段を気にせず食べたいものをばんばかカゴに突っ込むこととした。今回選んだのは「瀬戸田みかん」「輪切りブラッドオレンジ」「ひとくち杏」「期間限定輪切り塩レモン」の四種類。

地酒もせっかくなので買っていった。カップ酒で「眞澄」「神渡」「ダイヤ菊」と諏訪・茅野の銘柄をいろいろ。「五一ワイン」は塩尻の方のワインだけれどおいしいので赤白両方購入。大瓶は持ち帰るのが大変でミニサイズばかりだけど、これだけあれば満足です。

さいごに

夏休みの諏訪湖周辺は湖上花火大会の数日前ということもあってそこらじゅうに機材が置いてあったり、規制線があったり、三角コーンだらけだったり、嵐の前の静けさという様相だった。個人的にこの土地には過去に仕事で縁があったりして巡りながら懐かしい気持ちになる。まったく他人のものではなくて少し自分の人生も入っている感じ。そういえば私のハンドルネームは「梶家」で、これは生家にまつわるものごとに由来がある。例えるなら「家紋が梶」のような。諏訪大社の紋も梶なので、梶に縁のある我が家と私は先祖を辿ればどこかでこの土地と繋がっているのかもしれない。なんの根拠もないけれどそうだったらいいなと思う。大きな諏訪湖と周りを取り囲む街並みも好きだし、自然の美しさも好きだし、伝統と信仰が不思議な形で残っているところも好きだし、テンホウとか地酒とかも好きだ。久しぶりの遠出でどれだけ息を抜けたかわからない。また来ます。